ちょうど2年前の9月末のこと。まだ私が、AISソムリエ協会の授業をはじめたばかりで、イタリアワインの全体像をつかみかねていた頃の話です。
宇都宮でお世話になった知人のドクターが、ガン治療の免疫を上げるため『オレウロペイン』というオリーブの葉に含まれる成分について研究をしていたのですが、彼女の現地研修に従い、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州のウーディネに行った話をご紹介しましょう。
(そのときのオレウロペインの記事はこちら)
フリウリの丘陵はイタリアの『白ワインの聖地』と言っても過言ではないでしょう。トカイ・フリウラーノをはじめとするデリケートな香りと透明感のあるすっきりした酸味が魅力的です。
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリアは、イタリアの北東の端に位置し、スロヴェニアとオーストリアに国境を接する州です。白ワインは国際的な評価も非常に高い名産地なのです。
今回のオリーブの葉の工房を訪れた際、少し時間があったので、社長のリディオ氏にあちこちブドウ畑を見せてもらいました。
9月最終週だったため、ただいまシャルドネなどの白ブドウ収穫の真最中。
彼の車で案内される間も、ブドウをたくさん積んだ軽トラを何台か見かけたものです。
ここでは、D.O.C.で名高いColli Orientali del Friuli(フリウラーノ種とリボッラ・ジャッラ種を合わせて作る白ワインなどとピニョーロ種で作る赤ワインなど)が作られています。
リディオ氏がこのエリアのワインや地形の特徴を教えてくれました。
ウーディネから南東へ30kmほど下ったこの地方は、ナティゾーネ川が流れる丘が広がります。
「ここはなぁ、ちょうど二つの地区にまたがっていて、ここからアルプスのふもとまで続く丘陵ゾーン①Colli Orientali del Friuliとウーディネ方面に広がっていく広大な平野の②Furiuli Graveに分かれるのじゃよ」とリディオ氏。
Colli Orientali del Friuli地区には、地面に空気を含む層があるため、土壌は常に適度な湿気を保っているんだそう。ここでは、D.O.C.で名高いColli Orientali del Friuli(フリウラーノ種とリボッラ・ジャッラ種を合わせて作る白ワインなどとピニョーロ種で作る赤ワインなど)が作られています。
そのテリトリーのなかのRosazzo地区。数キロ離れた海の恩恵と、雨も少なく、太陽の恵みを十分に受ける恵まれた土地であり、また1068年にアゴスティーノ修道士がぶどうとオリーブの植樹を行った歴史ある地でもあります。
リディオ氏の運転するフォード車の車窓から、規則正しく並ぶ白ブドウの畑を眺めます。
彼はアメリカ生活が長かったためか、フォードはイタリアでは珍しいオートマティック車。車に携帯電話なんかもついていて、ちょっとアメリカーノな感じなのですが、親しみやすさは120%イタリアーノ!すごく親切で紳士的な方です。
rosazzo地区の中心となるのが、Abbazia di Rosazzoです。ベネディクト派の拠点である修道院で、11世紀当時からかなりの影響を持っていました。1981年にLe Vigne di Zamo'のエノロゴだったWalter
Filipputtiは、この修道院の畑にある絶滅寸前の黒ブドウ"のピニョーロ種"を、保護し復活させました。
そんな歴史があるからでしょうか。フリウリ地方では、国際品種を植えているブドウ畑を土着品種に植え替えると、補助金がでるそうです。その土地に根ざした特色あるワイン作りを目指す州の姿勢が、植え替えのため休耕田のようになっている空き地から、垣間見えます。
そしてマルタ騎士団の末裔たちが営むRocca Bernardaでは、ピコリット種(白ブドウ)の畑を見学。
(あくまでもダイジェストで畑見学だけ。本当はワインを買いたかったのですが、運悪く、ワイナリーは閉まっていました。)
このピコリットが非常に面白いブドウです。
写真のとおり、粒がものすごく小さい。しかも受粉しにくいので、結実する量もさらに少なくなってしまいます。こんな非効率なブドウ・・・とあきれてしまいそうなほど、実の成りが悪いのです。
この非常に価値のあるピコリットで作るパッシートは、熟れたアンズや白スパイス系の香りが高く、輝くような黄金色になります。
さてさて、そのあとオリーブの葉の工場見学をした後、リヴィオ氏の自宅で夕食を呼ばれました。
アペリティーボにはプロセッコと、工房の看板商品である黒オリーブとツナのペーストでクロスティーニ。これがメチャ美味でした。材料をメモしているので、家で実験してレシピを完成させようと思っています。
そしてアンティパスとには、今年の年始に加工した自家製のサラミがたくさん!
ばら色のプロシュットをはじめ、ポコッロ、クラテッロなどどれも絶品でしたが、中でも『ソープレッサ』という脂身をソフトサラミにしたものは、最高でした。聞けばこの地方の特産品だとか。
そして奥様の手作り『パスティッチョ』と地元では呼ぶラザーニャ。
ラザーニャは各地それぞれ中に挟むものが違ったりしますが、フリウリでは、炒めたラディッキオをはさむのだそう。やはりトレヴィーゾなどのラディッキオの産地が近いからでしょう。
サルシッチャのガッツリした肉の滋味と、ラディッキオの苦味、そしてベシャメルソースの甘みが、卵麺の毛布に包まれ、一体となった、傑作でした。
お腹に余裕があったら、もう一切れいただいたのでが。
そしてテーブルには、地ワインがおいしい料理と共に振舞われました。
①シャルドネ ②フリウラーノ+リボッラ・ジャッラ ③カヴェルネ・ソービニォンのいずれもColli Orientali del Friuliをいただきました。
そして食後はグラッパを。
ビジネスで来たT氏と研修で来たE先生、そしてオーストリア大学の悪性腫瘍の権威ケストラー先生夫妻と、会社のご主人夫妻が食卓を囲んで笑い、食べて、飲んだ晩餐では、イタリア語と英語と日本語が飛び交う不思議な夜となりました。
拙ブログ『butakoの2年間の休暇』から