母なる大地 シチリアのネロ・ダーヴォラ Feudo Montoni

シチリアを旅しながら、ワイナリーを回る。

パレルモから出発して、西のトラーパニ、南のアグリジェントを通り、またトラーパニへ。

シチリアの玄関口パレルモは、島の北に位置し、アラブやノルマンディ、アラゴンの文化が交錯するエキゾチックな街です。

パレルモに滞在するのなら、「アルカモ」エリアのワイナリーに行くのが妥当かな、とも思ったのですが、なぜか内陸へと車を走らせました。

フィロキセラの害を免れ、400年来のブドウの木が今も残る、と聞いて胸ときめかせて飛んでいった先は、カンティーナFeudo Montoniです。

 

見渡す限りのブドウ畑。風力エネルギーの風車も見えるけど、これは地元の電力会社のものらしい。
見渡す限りのブドウ畑。風力エネルギーの風車も見えるけど、これは地元の電力会社のものらしい。

案内してくれるのは、エノロゴのヴィンチェンソ・ナセッロ氏。まずは、360℃カンティーナを囲むブドウ畑へ。

「ここはブドウの海なんです」という言葉の通り、やや北よりの東向きの畑には、ブドウ畑が広がっていました。収穫の終えたブドウは、葉が黄や赤に色づき、とってもきれい。何よりもすごいブドウ畑です。ここには、ネロ・ダーボラをはじめ、ペッリコーネ、ぐりっろ、マスカレーゼ、インゾリア、カタラットなどの地場品種が植えられています。また国際品種のカベルネ・ソーヴィニオンやメルロー、シラーなどもあるそうです。

 

Feudo Montoniは、設立されて20年ですが、このブドウ畑には、非常に古いブドウの木があります。ここは、1469年に司教がカンティーナを造りました。その当時には、すでにネロ・ダーボラが植えられていたと考えられます。」

ネッロ・ダーボラの起源はシラクーサやノート周辺と言われています。その後、シチリアのほぼ全土に広がったのは、アルコールの強いワインができるため、それが指示されたからでしょうか。

樹齢400年の木の近くまで行くことはできませんでした。遠くから、「ほら、まばらに生えているあの区画だよ」と教えてもらいました。
樹齢400年の木の近くまで行くことはできませんでした。遠くから、「ほら、まばらに生えているあの区画だよ」と教えてもらいました。
葉が紅葉するタイプもあり。これは房の収穫後、アントシアニンが葉に出てしまうためだとか。
葉が紅葉するタイプもあり。これは房の収穫後、アントシアニンが葉に出てしまうためだとか。

今見ているこのブドウ畑を、大いなる自然を、瓶に詰める・・・というのを信条としています、とヴィンチェンソ。

 

無農薬で有機を貫き、温度管理や圧搾のしかた、実の選出など細心の注意を払って作られるワインは、どれも個性豊かで芳醇そのもの、だといいます。

 

土着品種にこだわり、有機農法で行う姿勢が評価され、今年もSlow Wineでは、賞をもらっています。

またローマ法王の住むヴァチカンにもワインを献納している誉れ高きカンティーナ。早く味見したいなぁ。

 

ここで、昼食の時間になってしまいました。(パレルモでのレンタカー貸し出しに手間取り、おまけに渋滞にあったせいで、1時間もアポに遅れたワタシ。。。)

 

ヴィンチェンソが連れ出してくれたのが、この界隈のアグリツーリズモでした。あいにく定休日だったのに、心よく迎えてくれたご主人。

出荷量の90%が海外に出て行くので、イタリアでこのワインを飲むのは難しいのかも。このアグリは、モントーネのワインを置いていました。
出荷量の90%が海外に出て行くので、イタリアでこのワインを飲むのは難しいのかも。このアグリは、モントーネのワインを置いていました。

そこで”N”を頂きました。

 

 

ネロ・ダーボラ100%、ステンレスタンクと瓶での熟成。カジュアルで軽め、でも穏やかなタンニンとしっかりした酸味、天草のような香りがして◎アグリのご主人も、値段も手ごろで質も良いので、お客様に勧めやすい・・・と何度も誉めていました。

 

 

 

ポテンシャルを秘めていて、ピエモンテでいうバルベーラみたいなモノ、と言われて、なるほどその通りと納得。

 

本日定休日・・・なのに心よく開けてくれました。左は乾燥サルシッチャとペコリーノ、右はオリーブとカポナータ。
本日定休日・・・なのに心よく開けてくれました。左は乾燥サルシッチャとペコリーノ、右はオリーブとカポナータ。

あわせた料理のなかでも、特に地元のペコリーノチーズ(6ヶ月くらい熟成)とよく合いました。酒粕のような甘い香りとしっかりとアミノ酸まで熟成したウマミが溶け合う最高のペコリーノは、Nの酸味とタンニンによくマッチしてましたよ。

タリアータも美味。(もう少しレアが良かったけど)

カジュアルなNの実力を十分見せてもらいました。

食後、カンティーナに戻り、他の銘柄を試飲しました。

 

グリッロは、パァっと南国フルーツの花火がはじけたような芳香が好ましく、酸も十分あり、またボディもしっかりしていました。圧搾の時の温度管理がやはり重要で、CO2などを加えながら低温圧搾をしているとのこと。後からくる苦味が、グリッロのキャラクターを印象を持っています。

 

カタラットもおすすめだそうですが、もう去年のものはすべて売り切ってしまったそう。

そしてロッソは、ネッロ・ダーボラ。6ヶ月樽熟成。美しい明るめのルビー色。タバコ、マラスキーナチェリー、バニラ、フルッティ・ディ・ボスコの香りに、うっとり。木目の細かいタンニンがきっちりとエッジを聞かせていて、酸味もしっかりあり、かすかに天草の甘みが香り、非常にバランスの取れたワイン。

 

「この酸味が、熟成に向くワインの証拠」とヴィンチェンソは言うので、2,3年寝かして飲んでみたいですね。ただ2009年の銘柄で、もう飲み頃だったので、早飲みは早飲みです。

 

そしてこのネーロ・ダーボラのもう一つ上のランクのものが、VURUCARA。

これはロバート・パーカーも高評価したという銘柄。ここでは試飲はできなかったので、購入しました。家で飲むのが楽しみです。

ヴィンチェンソとは、みっちり4時間も色々と話すことができて、有意義でした。若干25歳にして、モントーニのエノロゴに抜擢。すでに14歳の頃からデグスタッツィオーネをオフィシャルに行っていたのだとか。

 

科学や薬学の知識にも明るく、ワインの醸造学もかなりマニアックなところまでカバーしています。ラテン語やギリシャ語も読み解き、舞台のシナリオも書くのだそう。すごく多才で、25歳の若者としゃべっているとは思えませんでした。

 

でも、どんなに博学でも、彼の中心にあるのは「ワインを囲んで深まる人の絆」。コンヴィヴィウムの精神をモットーとしています。これからの活躍が楽しみなエノロゴです。

 

自然をボトルへ・・・モントーニのワインの豊かさは、母なる自然の豊かさなのです。大好きな家族や友人たちと栓を抜きたいワインですねー。

Amici Vini Italiani

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