1月も残りわずかになってしまいましたが、遅ればせながら、今年もよろしくお願いします!
イタリアワインを通して皆が幸せになりますように。
あなたにとっての“忘れられないワイン”はどんなワイン?
ワインを生業にしている方ならば、少なからずいくつかの名前を挙げることができると思います。
今回飲んだワインは、「美味しい」ではなく、「記憶に残る」味。とにかく今まで飲んだことのないようなスゴイ味なんです。
それは、去年秋にシチリアのネブロディ国立公園を訪れた時のこと。「イタリアのブタ博士」を自称する私は、ガストロノミーや歴史的見地からイタリアのブタを5年前から追い続けていて、シチリアにSuino Nero di Nebrodi(ネブロディの黒ブタ)という野生種のブタがいると知って、ブタを見に行ったのでした。
ネブロディは、イタリア最大の都市パレルモから東へ150km(メッシーナの手前)、内陸へ少し進んだ地帯です。豊かな森に囲まれた自然豊かな地帯には、高原で栽培されるイチゴやペコリーノチーズなど森の恵みが一杯です。
ネブロディ地帯に昔から生息しているこの黒ブタは、肉質が締まっていて旨みが高いと評判。チンタ・セネーゼのシチリア版みたいなものかしら。
ウンブリアを出てローマから飛行機を乗り、シラクサで別の仕事を終えてこの地区にたどり着いたのは夜8時。外回りと長時間の車の運転に疲れた体を引きずるようにして、Raccuja(ラクイヤ)村のアグリツーリズモポンテ・ドゥエ・アルキの食卓に着きました。
お客は私一人。
そこで出してくれたのが、ネブロディの黒ブタのステーキです!
炭火で焼かれたシンプルなステーキは、ロンボ(Lombo)と言われる腰肉の部分で、あばら骨がついている、ジューシーで旨みの多い部分。脂肪が炭火で程よく焦げ、香ばしさとウマミに変わっています。脂肪は甘く、肉は思ったよりも固くなく、程よい歯ごたえ。程よい肉汁。ジューシーというよりも、適度な肉汁が持続し、口に入れてからゴックンと喉を通るまで、ウマミが消えないのです。
これは絶品!!
そこの宿屋の主人が、「自家製のワインです」と言って出してくれた赤ワインを飲みながら、頂きました。その赤ワインは、ネーロ・ダーボラとマスカレーゼをブレンドした地ワイン。「どうですか?」と聞かれて、ちょっと答えに窮してしまいました。
ブラックベリーや黒コショウの香りに紛れ込んでいる、このかつお節みたいな香りとすえた酸味はなんなんだろう!(たぶん古い木樽に棲んでいる色んな菌の作用だと思うのですが)
アルコール度は高く、ワイングラスの肌を伝うトロリと垂れるアーチ具合からみて、15℃以上あるでしょうか。パワフルなのですが、いかんせんかつお節なんです。
「美味しいとか不味いっていう評価は、私にはできませんが、あなたが心を込めて作ったワインだから、とっても価値があると思います」と言うと、にっこり微笑んでくれました。
そして今年の秋から栽培し始めたんですよ、という「椎茸のグリル」に舌鼓。
なんでもイタリア北部ヴェネトの農業見本市で菌床のついた木を購入して、試しに栽培したそう。イタリアで椎茸なんて、食べたことのない私は喜び勇んでグリルを所望しました。
やや身は薄いものの、自家製のフレッシュ椎茸なんて日本でもお目にかかれない代物です。炭火で外はコンガリ、中はふっくらと焼けた椎茸を、地元のオリーブオイルと塩で食べるのも、なかなか乙なものでしたよ。
次回は、いよいよ、ネブロディの黒ブタと対面します!
引き続き、俺のワインはウニコ!②をお楽しみ下さい。今度は陽気なオジサンの作る手作りワイン。どや顔で勧められて…。