イタリア人の一人当たりの年間ワイン消費量は45L。(2007年、O.I.V.国際葡萄・葡萄酒機構発表)彼らにとって、ワインは日常の食事に欠かせない飲み物です。
でも毎日飲むとなると、飲み代もバカにならない。懐具合と相談になりそう。。。
実は、私もイタリアに来て数年間は、ワインは欠かしたくないけど、食費を圧迫するし、どうしよう、と思っていました。
そんな時、目にしたのが、旅先でのこの風景。
サルデーニャのDOCGヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラで有名なカンティーナ『ジョガンディーヌ』を訪れた時のことです。
ガソリンスタンドのようなノズルの付いた機械が並ぶ、清潔そうな大部屋には、Damigiana(ダミジャーナ)と呼ばれる5L入りの空き瓶を手にやってくる地元の人たちの姿が続々とありました。
そう、ここは、ジョガンティーヌのヴィーノ・スフーゾ(Vino sfuso:目方売り)の直売所だったのです。
5Lでたしか7ユーロ弱だったかしら。
ヴェルメンティーノやカンノナウなど、味はボトル販売のものよりもやや落ちるとは言え、リーゾナブルで質もそこそこ良いのです。
ウンブリアに住むようになってから、美味しいヴィーノ・スフーゾの買える直売所を探していました。なぜなら、地元でもなかなか探すのが難しいくらい、こっそりと売っている所がほとんどだからです。
友人のそのまた友人からの口コミで、やっと見つけることができました。
スポレートから車で10分。モンテファルコ方面に5kmほど行った高台にある販売所。幹線道路から外れているため、「一見さんがノリで立ち寄る」のは、不可能だと思われます。
そこのオヤジさんがニコニコしていて、感じがいい。
彼の名前を知らない私たち夫婦は、農民(コンタディーノ)を文字って、ディーノと呼ぶことにしました。
南向きのブドウ畑で、トレヴィアーノ・スポレティーノ、グレケット、シャルドネ、サンジョベーゼ、メルロー、サグランティーノを栽培しています。
白ワインは、それぞれ、単一種で売り出し(5Lで6.5ユーロ)、赤ワインは、サンジョベーゼ100%、ミスト(サンジョベーゼ+メルロー+カベルネ)、ロッソ・ディ・モンテファルコもどき(サンジョベーゼ+サグランティーノ+メルロー)のラインナップです。なぜ『もどき』かというと、当然ボトル入りでなはく、DOCの認定を受けていないため、その呼称で売れないからです。
ディーノのトレヴィアーノが、これまたウンブリアの夏にピッタリ。
シャルドネみたいにフルーティすぎず、線もか弱すぎず、酸味が高く、ドッシリしています。そのくせ、さっきブドウを搾りました、みたいな果実感にあふれていて、まるで水のようにグイグイ飲めてしまう不思議なワインなのです。
かといって、いくら飲んでもまったく飽きません。
なぜ「ウンブリアの夏にピッタリ」かと言うと、サマートリュフにあわせてもいいし、通年食卓にのぼるこの地方の肉料理との相性がいいからです。
赤のお気に入りは、ミストです。
辛口でマイルド、酸味、ミネラルのバランスが◎
やや軽めではあるので、生ハムなどのアンティパストにも合わせられます。
軽めといっても、どのワインもアルコールは13%を越えるのですが、アルコールだけが際立つことは、けっしてありません。それがこれらのワインのバランスの良さを物語っています。
「モンテファルコ・ロッソもどき」は、つい先日から売り出したばかりの新入り。
これから涼しくなってくると、そちらも試したいと思います。こちらはサグランティーノ種がブレンドされているので、5Lで7.5ユーロですが、これでも十分安いですよね。
ダミジャーナで買ったワインは、家に帰ったらすぐに1L入りの瓶に入れ替えます。こうすることで、酸化を防ぎ、美味しさを長持ちさせるためです。
1年ほど経って、私たちがディーノと呼んでいたご主人は、フランコという名前であることが判明しました。コンタディーノではなく、実は国鉄職員だったのですが、定年退職してから、かねてから持っていたブドウ畑からワイン作りをするようになったそうです。きちんとエノロゴ(醸造家)の指導も受けていて、ワインの知識も豊富なフランコ。
私たちも知人に、せっせと彼のワインを口コミで広め、販促活動にも一役買っています。
本日は、我が家のデイリーワインのお話でした。
気に入ったカンティーナとの出会いは、豊かな食卓を約束するもの。
でも飲みすぎには注意したいですね。
私も、国民平均の年間45Lは飲んでいる、と思うと少し恐ろしい気もします。