アマトリチャーナの本場で

スパゲッティ・アッラマトリチャーナSpaghetti all'Amatriciana(アマトリーチェ風スパゲッティ)をご存知ですか?

 

ローマの伝統料理として有名なパスタですが、実は料理が誕生したのはローマではありません。

 

アマトリーチェの名前の通り、マルケとウンブリアの境目にあるラッツィオ州のアマトリーチェ村にちなんでいます。

トランスマンツァ(羊の大移動)の様子 @モンテ・シビリーニ
トランスマンツァ(羊の大移動)の様子 @モンテ・シビリーニ

ローマの羊飼いと地元の村人が交流することで生まれた一品だと言われています。

 

ローマの羊飼いたちが、夏場、十分な牧草を与えるため、羊を連れてアマトリーチェ周辺の高原まで大移動していました。高原にいる間、羊飼いたちはチーズを作り、村人たちの作ったブタ加工品と物々交換をしました。

 

そのチーズとグアンチャーレ(ブタの頬肉の塩漬け)が出会い、地元の手打ちパスタと相まって出来たのが、『スパゲッティ・アッラマトリチャーナ』というわけなのです。

冬になり、羊飼いたちは温暖なローマを目指して帰ります。グアンチャーレもしっかりと持ち帰り、ローマでもこのパスタを再現した…というわけ。

 

その後のローマでは、アマトリチャーナのバリエーションとして、ブカティーニ(穴の開いたスパゲッティ)やリガトーニを使ったり、ソースもパンチェッタで代用したりタマネギを加えたりしています。

 

大きな変化としては、トマトソースに加えた点でしょう。これは18世紀のこと。最初の文献としてトマト入りのアマトリチャーナが紹介されたのは、1790年にFrancesco Leonardiによって書かれたL'Apicio Modernoというタイトルの料理本でした。(出典:ウィキペディア)

 

それまではトマトなしで作られており、名前もグリーチャと呼ばれていました。今でもスパゲッティ・アッラ・グリーチャとして食べられていて、アマトリチャーナの原型料理です。

ウンベルトⅠ通りからはシビリーニ山系を望むことができます
ウンベルトⅠ通りからはシビリーニ山系を望むことができます

それでは、8月27日にアマトリーチェで行なわれた『スパゲッティ・アラマトリチャーナ祭り』の様子をご報告!本場のサグラ(祭り)は、活気があって、アマトリチャーナ一色でしたよ。

 

アマトリーチェで、夏の2日間だけ行われるSagra degli spaghetti all’Amatriciana。今年は45回目を迎える老舗のサグラ(祭り)です。

 

まずは街をぐるりと1周。そう、ここはシビリーニ山系の一角にある国立公園内にある街。メインストリートであるウンベルトⅠ通りからは、彼方にCima Lepri山(たぶんこの山)が見えます。アマトリーチェの村は標高855mにあり、高原の気候。夏でもあまり暑くありません。

 

市内はじっくり徒歩で回っても2時間くらい。小さい路地裏が張り巡らされているエリアもあり、そぞろ歩きが楽しい。

 

そして午後18時、待ちに待ったサグラの開会です。

会場手前のチケット売り場で、食券を買うシステムなので、あらかじめ購入し、それを手に会場に入ります。一食5ユーロで、コップ一杯の水かワインが付いてきます。水は、シビリーニ山系の湧水をナチュラーレかガス入りにしています。

使用パスタはディ・チェコ。ソースは地元のホテル学校の教師らが、昨日すでに作っておいたものです。一つの寸胴鍋は80Lの容量があり、20kgまでのパスタがゆでられます。でもここでは12kgしか投入しません。

こうしてたっぷりのお湯の中で、踊るようにスパゲッティを茹でることにより、おいしい仕上がりになるからです。

 

1日5万食×2日のアマトリチャーナが作られます。ボランティアたちは非常に慣れた手つきでしたよ★
1日5万食×2日のアマトリチャーナが作られます。ボランティアたちは非常に慣れた手つきでしたよ★

鍋は、スパゲッティ同士がくっつかないように、ときどきかき回します。

プロローコ(地元復興協会)のスタッフや市民など総勢100人によって運営されるサグラですが、どの人もボランティアとして参加しています。

 

見てください、彼らの生き生きとした表情。

楽しそうに、アマトリチャーナの説明をしてくれます。

手際のいい流れ作業のため、参加者はさほど待たずに皿を手にすることができます。
手際のいい流れ作業のため、参加者はさほど待たずに皿を手にすることができます。

鍋は、スパゲッティ同士がくっつかないように、ときどきかき回します。

プロローコ(地元復興協会)のスタッフや市民など総勢100人によって運営されるサグラですが、どの人もボランティアとして参加しています。

 

見てください、彼らの生き生きとした表情。

楽しそうに、アマトリチャーナの説明をしてくれます。

 

茹で上がったパスタは、大きなバットにザザーッとあけて、ソースを大きなお玉でかけていきます。ソースの入れ物は、なんと牛乳を運ぶステンレス製の器。パスタにソースを絡ませながら、ペコリーノチーズをふりかけます。茹で上がったパスタの熱で、チーズが溶け、ソースにとろみがついていきます。

 

うーん、いい香り!!!

もう生唾が止まりません!

こうして、テンポよく出来上がるパスタを持って、テーブルに着きます。

ワインは白のヴェルディッキオを選びました。

 

パスタを一口食べると、グアンチャーレのコクとトマトの清涼感、ペコリーノの豊かな風味が一体になり、本当においしい。

麺は正しいアルデンテ。茹ですぎもなく、固すぎず、程よい弾力でもって、ウマミを含んだソースを身にまとっています。

 

そして恐るべきは、このグアンチャーレの素晴らしさです。たっぷりのオリーブオイルでカラッカラになるまで炒めているおかげでしょう。その香ばしさは、少しも失われておらず(食感はさすがにシトッリしていますが)、焦げ目がソースのアクセントとなっていました。

 

カリカリになるまで炒められたグアンチャーレが、本場の味の秘密でした。
カリカリになるまで炒められたグアンチャーレが、本場の味の秘密でした。

正直、1日5万食を作るサグラでのアマトリチャーナなので、あまり味の方は期待していませんでした。でも、文句なしの美味しさです。

偶然知り合った男性二人組みに、「おいしいですね」と話しかけると、

自分たちは、カンパーニャ州のソーラから、毎年このサグラに訪れる。チケットも4枚購入し、心ゆくまでおいしいアマトリチャーナを堪能して帰るんだ、と言っていました。

1皿でも、そこそこ満腹になるパスタを、なんと4皿も!

なんたる胃袋!

4皿というと20ユーロ支払うってこと?」と聞くと、

「うん、20ユーロ払って、州を越えて来ても、ここのサグラは価値があるからネ」

 

たしかにそうかもしれません。

 

ちなみに今年で45回を迎えるサグラですが、いくらスパゲッティ・ラマトリチャーナが有名だからって、マンネリにならないかしら、と思い、市長のセルジョ・ピロッツィ氏にその辺りを聞いてみました。

すると最近の新しい取り組みを教えてくれました。

 

     小麦粉アレルギーの人用に、小麦粉フリーのパスタを使うブースを設けている(今年で4年目だそうです)

     地元の湧水を使った水を提供している(ためしに飲ませてもらいましたが、ガス入り水、冷えてて、味もまろやかで最高においしかったです)

     今年から、プラスチック容器の使用をやめ、すべて自然に帰る素材を使っている(小学生の坊やたちがゴミの仕分けのボランティアをしていましたよー)

     今年は、ローマ郊外のオスティア市とご当地パスタ繋がりで、姉妹都市提携をした。オスティアはスパゲッティ・アッレ・ボンゴレが有名。

 

などなど、多くの人に楽しんでもらい、しかも環境にも優しいサグラにしようと努めている様子が伝わってきました。またスタッフには若者もおり、街の可能性を感じました。

 

最後に、アマトリーチェでおすすめのレストランの紹介です!

◆アマトリーチェといえば…

Hotel Ristorante Roma

Via dei Bastioni, 27 - Amatrice (RI)  

tel: +39 0746 825777

 

 

 

 

◆ウンベルトⅠ通りにあるトラットリア

Trattoria Ma-Tru

Corso Umberto, 7 Amatrice(RI)

tel: +39 0746.825689

(写真下) 

 

 

 

  

おまけ…

本場アマトリチャーナの掟

〈必須の材料〉グアンチャーレ、サンマルツァーノ種のトマトor信頼できるメーカーのトマト缶、スパゲッティ

〈認められる材料〉パスタ・ヴェルミチェッリ、ブカティーニ、ショートパスタ、コショウ

〈入れるべきではない材料〉タマネギ、ニンニク、セロリ、ニンジン、完熟していないトマト

 

(Pro Loco Amatriceのサイトより抜粋)

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