イタリアでは、毎年、たくさんのDOCGやDOCのワインが生まれますよね。私の住むウンブリアではヴェルナッチャ・ディ・カンナーラVernaccia di Cannara Colli Martanoが、この3月、DOCに昇格しました。
ブドウの品種は、コルネッタCornetta、(学名Alias Vernaccia Nera)。カンナーラという街の農民がひっそりと栽培していた幻に近い品種だったのです。
今日は、カンナーラでただ今開催中のタマネギ祭りに行った時の様子を交えながら、ヴェルナッチャ・ディ・カンナーラのご紹介です。
この『タマネギ祭り』が侮れないほど有名なんです。
カンナーラといえばタマネギ、タマネギといえばカンナーラと言ってもいいくらい、ご当地アイテムとしては名物品。そして毎年9月半ばは、タマネギの収穫を待って、タマネギ祭りが盛大に行われます。
1時間もあれば歩き回れるくらい小さな街なのですが、所狭しとタマネギを売る屋台が並び、それに混じって、アクセサリーや雑貨店も軒を連ね、ごった返します。
祭りの一番のお目当ては、6つあるスタンドです。
スタンドと言っても、食堂といってよいほど広く、料理の種類も豊富。
なかでもタマネギをベースにしている品々が美味で、ローマやトスカーナからもわざわざやってくるファンも多いのです。
さて、数あるうちの一つのスタンドEl Cipollaro へ。
ここは地元サッカーチームのメンバーが運営しているスタンドです。すごい、大盛況!
皆美味しそうに、タマネギ料理に舌鼓を打っていますよ。
かねてからアポを取っていた全スタンドを仕切るルチャーナ氏に、インタビュー。地元のテレビ局も来て取材を開始したので、それについていくことにしました。
ルチャーナ氏、町長さん、クルーについて回る私。
市長さんが"わが町カンナーラの自慢〝で『タマネギ』と『ヴェルナッチャ・ディ・カンナーラ』をしっかりPRしていたのが印象的でした。農業に根付いた町なのです。
そして、カンナーラで唯一ヴェルナッチャを売っているのが、カンティーナ・ディ・フィリッポ。(DOCなのに!)
この地域のヴェルナッチャ・ネーラは、コルネッタと呼ばれていますが、それは、実が膨らむ際に、コルノ(角)のようにとんがって、だんだんと丸みを帯びていくから。
1500年代からCornacorumの名で、記録が残っている歴史ある品種です。
少し苦味があることから、干してパッシートにして飲んでいました。
それが近年になり、あまり嗜好にあわなくなったのか、やがて存在を忘れ去られていきます。
農家のブドウ畑に1本か2本、残すばかり。下手すれば、畑の持ち主さえ、何のブドウか分からないこともあったそう。
そんなコルネッタを発掘し、甦らせたのがカンティーナ・ディ・フィリッポのロベルト・ディ・フィリッポ氏。
1軒ずつ農家を回って、コルネッタの苗を見つけ出し、ペルージャ大学の農学部に持ち込んで調べてもらいました。そうして浮き上がってきたのが、コルネッタ(アリアス・ヴェルナッチャ・ネーラ)で、正真正銘の土着品種なのでありました。
ロベルトの努力の甲斐あり、コルネッタは今年、Colli MartaniのエリアでDOCを取得しました。
そのワインの味は・・・濃いルビー色で詰まっています。ブラックベリーの香り、スミレの香り、ビターアーモンド。くどくない甘さで、ほろ苦さと収斂性が少しあります。
デザートワインとして飲むのに最適ですね。
ヴェルナッチャ・ディ・カンナーラの造り手が増えて、ファンが増えればいいのになぁ。
お隣のモンテファルコ・サグランティーノ・パッシートよりも、くせの少ない、でもややビターで好感のあるデザートワインなので、きっと多くの人に愛されるはずです。