今年初めて行われたキャンティのアンテプリマの試飲会に行ってきました。
今年のアンテプリマの試飲会としてはキャンティが一番最初に行われました。
他のDOCGは今迄から毎年行われていたのですが、キャンティは今年初めての試みということで、ジャーナリストと協会関係者の間だけで行われたのですが、試飲会の前には特別に討論会があるということでした。
会場となったボルゲーゼ宮殿は自宅から歩いて5分ほどのところにあるので、この日は徒歩で会場向かいました。
入口で、記帳を済ませ中に入ると部屋が6つにわかれていて
すでにワインのおかれたテーブルの後ろに作り手が待機していて試飲の準備をされてました。
その部屋を奥に進んでつきあたりの大広間で討論会が行われました。
ここの宮殿は昨年キャンティ・ルフィナの試飲・討論会、そして晩餐会の時にも使われた場所で、相変わら当時のままを残したフレスコ画や家具などがそのままあり、何度来ても圧倒されます。
討論会は最初にキャンティ協会会長のジョバンニ・ブーズィからの挨拶からはじまりました。
キャンティには、およそ3600の作り手がいて、キャンティだけでも1000種類を軽くを超えるのワインがボトルづめされて売られているこの地域。
キャンティは世界中で売られている古くからあるデノミナッツィオーネであるけれども、クオリティーよりもコストパフォーマンスの高い…というとよく聞こえるけど、実際は安いDOCGというレッテルが貼られ、軽のみでかつてのフィアスコのイメージも強かった。しかし、ここ15年前ぐらいから多産性よりもクオリティーにこだわる作り手があらわれ、葡萄を多く作ることより、木を減らしぶどうの質を上げる努力を始めた。それから10年15年がたった今、ブドウの質も非常にいい状態になって来た。今後も以前とは違うイメージでよくなることを願う。・・・というような事を言われていました。
続いて、ガンベロロッソのジャーナリスト マルコ・サベリコやエスプレッソ編集長のエルネスト・ジェンティーリからも、挨拶があり
イタリアのDOCG広げるためにもデノミナッツィオーネについて話すには最もいい機会ではないか・・・小さな作り手を保護するためにもキャンティがよりよくなるように、キャンティについて話す必要性がある最初の試みとして行われたキャンティのアンテプリマだ。・・・という説明がありました。
他にも世界で活躍しているワインジャーナルのジャーナリスト イヤン・ドメニコ・ダガタからも、今もまだ世界ではキャンティと言えばフィアスコと言うイメージは消えてはいない。
アメリカでキャンティを知ってても、キャンティにシエナ・フィレンツェ、ピサなどなどソットゾーナのキャンティがあることを知る人は少ない。
キャンティコッリフィオレンティー二もキャンティコッリセネージまた他のソットゾーナのキャンティも全てひとまとめでキャンティと記憶している人がほとんどだろう。
普通はそれで充分で、相変わらず世界市場ではたくさんの数のキャンティが売られている。キャンティはフルーティーで気軽に飲めるデイリーワインであることは確かな事実でそれは守って行っていいのではないか・・という意見。
それに続いて、キャンティクラシコは徐々に変わりつつあるけれども、だからと言ってキャンティクラシコの様にクオリティーにこだわって作った結果、値段が上がっても売れるワインというわけではなく、またそうなることは問題があり、そのあたりも注意する必要がある難しいテーマだというシビアな意見もありました。
そのほか、これは一時のシチリア・ネロ-ヴォラやプロセッコ、ゲヴルツの時のように一つの流行として再びキャンティが取り上げられる時が来ているのではないかという意見。
今まで通りではなく広めていくには変えていく必要があると意見。
レストランに行ってキャンティを飲みたいから注文する人などいないだろう。
でもキャンティはレストランでも注文される。しかし美味しいワインを飲みたいからレストランでキャンティを頼むという人はいないだろう、でも注文される理由は第一に安いから・・・この状態は決して悪いことではない。フルーティで気軽に楽しめるワインそれがキャンティでいいのではないか…という意見。
いろんな意見があるなか、その後ジュリオ・ガンベッリの伝記の著者であるカルロ マキからは、会長に質問として、クオリティーが上がったって?どんな?どれぐらい?
例えばブドウのクオリティーが上がって、それでどれだけ作り手が潤ったと言えるだろう。
作り手は以前以上にブドウの生産量を減らし、質の良いブドウを作る努力をして一生懸命やっているというのに、今でも安い値段でワインは売られ、苦しい状況は何も変わってないのではないだろうか・・・というやや批判的な意見も、でも彼がその辺は差しさわりなく冗談ぽく発言されてたこともあり、場の雰囲気が乱れることはありませんでした。
でも、この時ばかりは広間の横で次の試飲会の待機をしていた作り手からもたくさんの拍手が起こりました。
この後も次から次にいろんな人にマイクが渡り、キャンティ討論会はかなり白熱して
3時間近くに及ぶ長丁場となりました。
イタリア人はとにかく自分の意見というのをどんどん発言するので、このように討論会が長引くことはよくあるのですが、討論会が長くなると、退屈になって途中退散する人や隣の人としゃべって文句言いだす人がいるんだけれども、この日の討論会は全ての人の意見がそれぞれに興味深く途中で立ち上がって帰る人の姿はありませんでした。
その後、随分時間が遅れてキャンティのアンテプリマの試飲が行われました。
試飲は座ってソムリエのサービスの中で行う方法と作り手のテーブルを回って作り手の話を聞きながら試飲する方法の両方が自由に選べました。
・・・とは言っても両サイドに置かれたアンテプリマのワインだけでもかなりの数がありました。
ただし、着席式の方は2011年に収穫したブドウで作ったこれから2011年のキャンティになるであろう・・・と書かれたエチケッタもまだ出来上がっていない市場に出回る前の完全な状態ではないものしかなく、作り手のテーブルの方にはアンテプリマのワイン以外にすでに市場に出回っているワインの両方が置いてありました。
私としては、無謀にもこの後、カルミニャーノのアンテプリマの試飲会と晩餐会にも行く予定にしてたので、時間があまりなく、どんどんソムリエに自分の希望するワインを運んで来てもらって試飲を進めていくことにしました。
けれども、大勢のジャーナリストのリクエストを聞いて数人のソムリエがワインをサービスしてくれるのを待ってるのも結構時間がかかるのと、キャンティのアンテプリマは他のワインと違って短期間で出来上がるということもあって中にはさっきバスカから出してきて入れたんではないかと感じる発酵途中のワインなんかも多く、評価するにはあまりに状態悪くちょっと嫌気がさして来て、40種類ほど気になるものをさくさくっと試飲してからは、作り手のいる各テーブルを回ってアンテプリマとアンテプリマ以外のワインを試飲してまわりました。
結果、これから出回る予定の2011年のヴィンテージのキャンティは早飲みのキャンティにはいい年になったのではないかと思います。
8月に連日暑い日続いた事もあり、ブドウもよく熟しており、収穫時の雨や雹による問題もありませんでした。
キャンティの特徴である果実味は充分にあり、ブドウがよく熟した年だったということは多くの作り手のアンテプリマを試飲して感じました。
逆に作り手によっては酸の割には果実味が過剰すぎる感じがするところもありましたが、世界市場ということを考えると甘み果実味の多いワインはわかりやすく受け入れられやすいので、すぐ飲みのキャンティにとっては、それもまたいいのかとも思いました。
私は、まだまだキャンティはその名を知る人が多い割にはキャンティにはキャンティと明記する以外にキャンティ コッリ アレティー二(アレッツォ)キャンティ コッリ フィオレンティー二(フィレンツェ)キャンティ コッリ セネーズィ(シエナ)キャンティ コリーネ
ピサーネ(ピサ)キャンティ モンタルバーノ(モンタルバーノ)キャンティ モンテスペルトリィ(モンテスぺルトリィ)キャンティルフィナ(ルフィナ)というキャンティ
ソットゾーナがあることを知る人はまだまだ少なく、それも全てキャンティ地域の中にあり、ソットゾーナ以外のキャンティ地区はキャンティとしか名のれない造り手がいること、ソットゾーナはキャンティとも名乗れるし、どちらを名乗ってもいいことなどを知る人は少ないように思います。
・・・に対して、キャンティクラシコはそう言ったものがありません。
グレーべでつくられてもキャンティクラシコはキャンティクラシコでパンツァーノでつくられてもキャンティクラシコはキャンティクラシコと明記されます。
今後、もっとそれを知る人が多く出てくれば、少しは購買意欲も高まる?・・かどうかはわかりませんが
そのためにも、キャンティのアンテプリマも他のアンテプリマ同様に、もっと広い範囲でやる必要があるのではないかと思いました。
2012年2月29日