Slow Wineというガイドをご存知ですか?
スローフード協会が発行するガイドブックなのですが、伝統にのっとったワイナリーなどには、キョッチョラ(カタツムリ)マークが与えられるなど、独自のものさしでワインを評価しています。
そのスローワインのウンブリアでの試飲会が昨日あったため、隣町のモンテファルコまで行ってきました。
今年のスローワインに取り上げられたもののうち、非常にすばらしいワインに与えられるのが、グランディ・ヴィーニ(Grandi Vini)。今回取得した238のうち178が初登場でした。21000ワインが試飲された、ということですから、相当数のなかを選ばれた逸品なのでしょう。評価基準は、テロワールを十分感じるようなワイン。
スローフードの精神が、ワインの方でも伺えますね。
さて、ウンブリアのグランディ・ヴィーニといえば
Tabarrini – Adarmando 2009
Palazzone – Orvieto Classico Superiore Terre Vineate 2010
Antonelli San Marco – Sagrantino di Montefalco 2007
Fattoria Colleallodole – Sagrantino di Montefalco Colleallodole
2007
Di Filippo – Vernaccia di Cannara 2009
以上の5銘柄。
Vernaccia di Cannaraは、以前、このブログでもお知らせしましたよねぇ~。
9月にオルヴィエートに『スローシティの取材』に行った際、そこの理事に飲ませてもらったPalazzone “Orvieto Classico Superiore Terre Vineate 2010”。
あらためて美味しいと思いました。
Procanico 50% Grechetto 30% Verdello, Drupeggio, Malvasia 20%
香りが繊細で、ビアンコ・スピーナ、白い花、ミネラルなどシンプルだけど上品に香り、口に含むとエレガントでボリュームがあります。辛口ですが、マルヴァジアなどのおかげか甘みもあり、酸味、ミネラルとのバランスもよし。プロカニコ(トレヴィアーノ)やグリケットの苦味も、残り香にあり、これぞウンブリアの味、と言ったところでしょうか。
Tabarrini – Adarmando 2009
こちらは畑によって3種類のサグランティーノがあり、それぞれ個性が違って面白い。
まずは、Colle Grimaldesio 少し軽めのサグランティーノ。
Colle alle Macchie 2004 は重厚感があり、タンニンがグイグイと押し迫る
Campo alla Cerqua 2007 は程よいタンニンで、豊かなフレーバー。
Fattoria Colleallodole Sagrantino2007年。これはバランスのよいサグランティーノ。ブラックベリーや赤い実の香り、カカオ、スパイスの香り。
面白かったのが、若い作り手たちの会話。
私がBocale Vini(ヴァレンティーノ)のサグランティーノの試飲をしていたところ、タバリーニのジャンパオロとコッレアッロードレのフランチェスコなる若旦那たちもやってきて、調子はどうだい?とお互いをねぎらいます。
ヴァレンティーノに向かって「元市長だけどさ、ワイン作りよりも政治のほうがいいんでないの?」と聞くジャンパオロ(タバリーニ)の鋭い質問に、「いや、俺にはワイン作りが性にあってるよ、政治の世界は面倒で。。。」なんてのらりくらりと交わします。
また隣にいたパオロ・ベアのジャンピエロ(彼はアメリカを中心に輸出に成功する造り手)のワインを味見しながら、にわか品評会。若い衆三人とも、立派はサグランティーノの造り手なんだけど、パオロ・ベアのワインが気になってしょうがない。結構、真剣に試飲していましたよ。
ベアのワインは、自然派にこだわり、樹齢が若いサグランティーノの木は、IGTに格下げしてしまう志高い造り手。またモストに酵母は一切入れず、自然の菌での発酵を促しています。ただ、一本が、すごく高い!とてもコダワリが強くて、少し近づき難い雰囲気もかもしていたのです。(ちなみに彼は、自然派ワイン協会Vini Veriの会長です)
でも、お互いモンテファルコの知人仲間の間柄。
若い衆の疑問なんかにも気さくに答えるジャンピエロ。
「大事なのはな、造り手が自分のワインを信じることなんだよ」と熱く語るジャンピエロの姿が印象的。
不景気の世の中。モンテファルコでも不振に喘ぐ作り手はたくさんいます。皆、自分たちのワインに誇りを持っているし、多く売りたい。たえず良いワインを造り続けるのは、至難の業なんですよね。
試飲の合間に、つまんで下さいと、ブースに用意されたのは、スローフード協会のプレシディオ品。
ファーべのペーストはアメリアから。
マッツァ・ディ・フェガトは、レバー入りのサルシッチャで、チッタ・ディ・カステッロの名産。
近くの農家さんが作ったカリフラワーを、ブルスケッタにしたものなど。。。
マッツァ・ディ・フェガトが、これはワイン好き泣かせの味でした。
レバーの風味豊かで、この苦味とウマミが、イカの塩辛を彷彿とさせます。
さて、他にも良かったワインを紹介。
Rosso Spina(Cantina Spina)IGT Montepurciano 100%
Spina –Marsciano-PG
モンテプルチャーノなのに独特の甘みが少ない(私にとってはうれしい)、マイルドで、ややスパイスの風味もあり、ステーキなどに合いそう。
この地方では、モンテプルチャーノが昔から使われていたそうです。
Trasimeno Gamay(Divina Villa)DOC
トラジメーノ湖のエリアにある
ウンブリアにもガメイがあるんです。ボジョレーを思い浮かべる人もいますが、こちらはまったく別物。ベリーや桑の実の香り、優しいタンニンがくせになります。
(写真は同社のグレケットです)
TEGOLARO(Carlo e Marco Carini)IGT 2008
こちらもトラジメーノ湖エリア。先代が40年前に植えた、メルローとカベルネ・ソーヴィニオンが良い具合に仕上がっています。深みと奥行きがあって、ベリーのフレッシュ感もあって、タンニンもエッジが効いています。あと3年くらいは寝かせたら、すごく美味しくなるのではないでしょうか。
こちらのカンティーナCastello Monte Vibiano(PG)は、一度行って見たいと思った所。
0エミッションを世界で初めて実現したブドウ畑もあるそうで、見てみたいです。太陽パネルで走るトラクターとかあるらしい!! La Sterという赤ワインは、シラーやカベルネ・ソーヴィニオン、メルローがブレンドされたもの。重厚感があり、安定した味。個性と言う意味では、地場品種には叶わないけど、エレガントなので、どんなシーンでも喜ばれそうなワイン。
そして、会は宴もたけなわ。
と、そのとき、ガリバルディに扮した男性が、音頭を取り出した~!
聞くとウンベルティデという街から、この街のPRをしに来たらしいのです。
そして、今年はイタリア統一150周年の記念すべき歳なので・・・とここで、イタリアの国家を斉唱しだしました。もちろん、周りの皆も一緒に。
国家をこうやって歌えるイタリアって、すごいなぁ。
日本だったら右翼っぽくなってしまう(ま、日本が異常なんですが)ところですが、こちらでは統一国家としてのイタリアを称える気持ちをみんなが持っているのです。
純粋な愛国心を、まざまざと見せ付けられて、素晴らしい、と思ってしまいました。
ウンブリアのカンティーナは、モンテファルコばかりで、まだ知らない所も多い。最近、ソムリエ関係者とも友達の輪が広がりつつあることだし、来年は、もっといろんな試飲会やカンティーナに出かけて行こう。
P.S.
FaceBookでAVIのことを見て、興味をもってくれたヴァルターさん(左)。
とっても気のいいオジサマ。
彼は、Slow Wineの筆者の1人です。