2012年 ブルネッロのアンテプリマ

トキワガシ()の山という意味を持つモンタルチーノ。ここはイタリアワインの最高峰ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを生み出すワインの里。イタリアに来て6年になりますが、いつかブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワインを深く知りたい、と思っていたので、今回のアンテプリマ『Benvenuto Brunello』は願ってもない機会でした。

 

 

 

 サンジョベーゼ種というブドウがどう人の手によって変化していくのか。前回のキャンティ・クラッシコに続き、その神秘のベールを剥がしていくのが今回の旅(フィレンツェ、モンタルチーノ巡り)のテーマです。キャンティ・クラッシコと違い、ブルネッロは100%サンジョベーゼ種の使用が義務付けられています。

(サンジョベーゼ・グロッソという粒の大きい品種)

 

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは法定熟成期間法廷50ヶ月樽熟成(うち最低2年はオークの樽で熟成)、リゼルバは62ヶ月と決まっており、オーク樽使熟成と規定されています。オーク樽と一口に言っても大樽やバリック、トンノーなど大きさは様々。

 

産地もフランス、スロベニア、またファーストの樽にするか2番樽にするかなど、樽選びでも味が変わってきます。もちろん、ブドウの育った条件や作り方によっても違います。同じブドウから派生する千差万別の味の中から、自分のお気に入りを見つけるのも良いですね。

 

さて、前置きはこれくらいにして、オルチャ渓谷に佇む中世の町ブルネッロへ、いざ!

会場に着くまでに、渓谷を堪能。

先週降った雪がところどころに解けずに残っていましたが、ブドウ畑には雪は皆無でした。勾配の激しい丘は、良いワインを約束します。つまり、ブドウが丘で育つメリットは(平地に比べて)計りしれない。たとえば風が通り抜け害虫の発生を抑え、日照や水はけ、などでアドバンテージがあります。街に入る前に、すでに美味しいワインが飲めることを、ブドウ畑の広がる風景は物語っていました。

 アンテプリマの内容は以下の通り

Brunello di Montalcino 2007
Brunello di Montalcino Riserva 2006
Rosso di Montalcino 2010
  200620072010ともブドウの出来は非常によい5つ星です。

これは楽しみだ。

 

会場の大きなサロンにすべての生産者が集結していました。

ここで特に印象に残ったものを。

Fornacina 

 Brunello di Montalcino 2007

 

カカオ、シガー、バニラの香り。モンタルチーノより12km東南にあり、暑い地域なので、ワインの色が濃いのが特徴。熟成はスロベニア産の大樽2530HLを使っているそうです。30日間のマセラシオン、36ヶ月の樽熟成、1年間の瓶樽熟成。有機生産者

Riserva 2006も美味でした。

2006年は特に良い年だったので、エレガントな味わいで、鉄分などのミネラルが豊富に感じられるリッチなボディ。ここのカンティーナの息子さんに嫁いだというデンマーク人の女性がティスティングしてくれたのですがチャーミングでした。

Il Paradiso di Manfredi   

モンタルチーノの東北。ここはブルネッロでも最近めっきり少なくなった家族経営のカンティーナ。フローリオさんと娘さんたちが手がけるワインは年間9000本で、きちんとした骨格と豊かな風味を持つブルネッロです。こちらもビオで土地にこだわっています。

かつては海底だったという地質もあるので、ミネラルも感じられるのです。

Rosso di Montalcino2010を飲んでびっくり。若いにも関わらず、まったくいやな渋みがないのです。まろやかな飲み口、チェリーやかすかなスミレの香り。

セメントタンクで一切温度管理をせずに、自然のまま醗酵させたワインってすごいと思いませんか? 14ヶ月大樽。

 

Brunello di Montalcino 2007 36ヶ月大樽熟成。 バルサミコ、リクイリッツィア、カンネッラなど。
Brunello di Montalcino Riserva 2006
 48ヶ月大樽熟成。モーレ、カラメル、タバコ、ゴボウのような土の香り、森の下の濡れた土、黒トリュフ、ハチミツ

全体として、森や土の香りなどがして、ミネラル分もたっぷり。

おいしいなぁ、と思わずうなってしまいました。

 

Tenuta Le Potazzine 

 

 可愛いスズメのラベルが印象的。

1993年からワイン作りを。こちらの女主人のジリオーラが熱心に説明してくれました。

少し透明感のあるルビー色。なんだか吸い込まれそうな美しい澄んだ色です。

こちらのカンティーナもワインの醸造の際に自然発酵させます。標高500メートルに畑があるので、酷暑であってもブドウには影響は与えないのよ、とジリオーラさん。標高の高さがサンジョベーゼの香りを最大限に引き出す秘訣、と教えてくれました。

Brunello di Montalcino 2007 3840ヶ月大樽熟成。 乾燥したイチジクの香り。

香りが非常に持続しますね。

 

面白かった作り手がこちら。

Cupano

非常に優しい味が印象的。

髭のおじさんリオネル氏がニコニコしてボトルを傾けてくれました。

ブルネッロの2007年はね、とっても難しい年で・・・暑かったんだが、非常にブドウの糖度が見極めにくかったんじゃ。

その言葉通り2007年は高いアルコールに仕上がりました。

リオネルさんのブルネッロは、ビロードのようなふくよかさがあり、

2007年は甘みを多く感じました。赤い果実、リクイリッツィア、腐葉土、

2006年は一転して力強さ。タンニンですがアグレッシブということはまったくなく、ボディがみっちりと詰まったような印象です。ブラックベリー、シナモン、黒コショウ

2005年 スミレ

フランス人であるリオネルさん。醸造に関する大学の研究職をしていたというリオネルさんですが、農民になりたかった・・・と一念発起して退職します。「なぜ僕がワイン作りをしているか分かるかい?醸造家は農民のなかでももっともエレガントな職種だからだよ」と茶目っ気たっぷりに教えてくれました。(あとで調べると、「ワインの神様」といわれるブルゴーニュの造り手アンリ・ジャイエ氏に師事していたことが判明。すごいキャリアを持っていたのですね!)

もともとトスカーナに住んでいたそうですが、「モンタルチーノはワイン作りにもっとも適した土地」と感じ、バンフィ所有だったこの土地が売りに出されたことを知り、ワイナリーを建てます。

その土地はモンタルチーノの南西に位置するオンブローネ川に接した丘で、20年以上も荒地だったところを開墾したものでした。「川の周辺にあるこのあたりの土には石が層になっていて、ブドウの根の張り方に影響しているんだ。通常、ブドウの根は横に伸びていくもの。でも石が地中にあるため、その下層にある水を求めて、根が地中深くまで伸びるんじゃ。だからこの石は非常に需要なんだよ」

 

それにしても大手の参加がなかったです。ビヨンディ・サンティやバンフィなんかのワインも試飲しちゃおうとミーハーに思っていたのですが、参加してないって。

 そして会場の別空間には、巨大バールが。

オーダーするとソムリエが席までワインを持ってきてくれる、という粋な計らい。ワインを座ってじっくり飲むのにもってこい。また1度に6つまでオーダーできるので、飲み比べにも適しています。

これは良いシステムですね。実際、多くのジャーナリストがパソコンを広げながら、真剣な顔で試飲をしていました。ブルネッロのアンテプリマを120%活用することができます。

AISのソムリエの方に勧めてもらったワイン合計25種類。

 

白ブドウで作ったデートワインmoscadelloがフレッシュで蜜みたいで美味!

ヴィンサントなんかよりも私は好きですね。

Moscadelloは、Il Poggione社(フリッザンテで珍しい。軽い感じ)、Silvio Nardi(みかんの皮のような柑橘類のフレッシュな味)、Fiorile(蜂蜜、キンカン、金木犀…おいしい!)など、トロリとしていて食後にビスコット(カントゥッチなど)と食べるとたまらない。

 

ここで試したワインには、バンフィもありました。Brunelloのリゼルバ2006年は、まだまだ渋い。重厚感があって、ベリー、木炭、木樽のフレイバー満載でしたが、あと五年くらい寝かせたら程よいまろやかさになるのでは。しかしよくよく考えてみるとワインって本当に不思議な飲み物で、時間が経てばおいしくなるなんて、まさに生き物です。おいしいワインの造り手は、人を感動させる意味において、偉大なアーティストと言っても過言ではないですよね。

晩は、友人と宿のレストランで料理とのマリアージュを。

私は昼間の試飲で軽めのものしか注文できなかったのですが(ヘタレやなぁ)、彼女はワインの可能性を料理と楽しむように、いろんな料理にチャレンジ。

 

白ワインARIOSO 2010年 Campo alla Sughero ブドウは、Sauvignon blancとわずかに Viognier.白い花、桃、ミントの香り。すっきりした味わいがリッボリータとピーチ・アリオーネにマッチ。

Rosso di montalcino 2010年 Talenti

ご機嫌のワイン。野うさぎのパテ、スパイシーなノロジカの煮込みと。

 

訪れたのは2月24日(金)でしたが、26日(日)には、2012年出荷分のブルネロの総合評価が★で表されて、コムーネの壁に塗りこまれます。

2012年はなんと★★★★★。

リゼルバの生まれた2007年は暑くて難しい年だと言われていますが、ブルネッロ地区の評価は上々ということでした。

 

奥深いブルネッロの片鱗を今回の試飲会では味わわせてもらいました。

カンティーナの大小はあるけれど、どこも真摯にワイン作りと向き合い、ブドウの持ち味を生かした醸造を心がけています。それがワインの個性となって現れているのでした。

偉大なるサンジョベーゼ。

ますます好きになりました。

 

実際、ブドウ畑の広がるモンタルチーノの町での試飲会は、土に近いだけに、そのことを一層思わせてくれたと思います。

 

Amici Vini Italiani

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