太陽に愛され、風が吹きぬける大地。
ブドウを植えれば、放っておいても糖度の高い良い実がなる、恵まれたシチリアでは、長らく北部や海外のワインのアルコールを上げる用のモストを、輸出していました。
地元の人は、伝統的な製法で作られた粗造りなグリッロやネロ・ダーボラを地酒として飲んでいたのです。
そんな時代、シチリアの地元種のポテンシャルを最大に引き出すための、技術にこだわり、ワイン作りを始めた一家がいました。ドンナ・フガータ社の社長ジャコモ・ラッロと妻のガブリエッラです。現在は、ジョセとアントニオがそれを引き継ぎます。手作業を多く取り入れ、テロワール生かすワイン作りが続けられています。
現在のワイナリーは、マルサラの古いVilla(屋敷)内で行われています。
ヤシの木が茂り、白亜の壁がまぶしいワイナリーは、これぞシチリアといった、たたずまいですね。
ドンナ・フガータの所有するブドウ畑は、シチリア内で2ヶ所。
コンテッサ・エンテリーナとパンテレリア島ですが、パンテレリア島は、そう、ご存知、モスカート・ディ・アレッサンドリアを用いてパッシートを作っています。
このブドウ、ジビッボの別名で知っている方も多いでしょう。
ステンレスタンクが、ズラリと並ぶ醸造室で、目に留まったのがコンクリートタンク。
これは、かつてマルサラ作りをしていたドンナ・フガータ社の前身の会社のもの。
こうして再利用です。
コンクリートタンクは、主に、醸造が終わったワインを一定期間寝かせるために用います。
温度が一定で、外界と遮断されているのでとてもよいのだとか。
主に白、もしくは軽めの赤ワインが入れられています。
そして圧巻なのは、地下の熟成庫。ここは白のキアランダと、赤のタンクレディ、アンゲリ、ミレ・エ・ウナ・ノッテの全4種類が眠っています~。
以前You Tubeで見たのは、品質管理担当のジョセさん(創始者の娘)が、ボサノバを歌っていたっけ。
音響効果抜群。
気温は常に15-16℃に保たれており、トゥーフォ(凝灰石)で守られた外壁によって湿度は80~85%と一定です。
熟成するのに良い波動が流れてそうな場所ですね。
ドンナ・フガータのラインナップは、全部で18銘柄。(グラッパも含めて)
すべてを記述することはできませんが、試飲させてもらったなかから、いくつかコメント。
白のなかでも、香りがよく印象に残ったのがLa Fufa(ラ・フーガ)。
白ワインは香りが命なので、その香りを多く含有している皮の部分がとても大事。
収穫期に、シチリアの夏の暑さで、皮が壊れてしまわないように、夜間に摘み取りを行っています。
ボディもなかなかあり、ミネラルが豊富。南国フルーツ(マンゴー、バナナ)の香り。
イセエビのパスタと合う(!)そうですよ。
赤ワインは、Tancredi(タンクレディ)がバランスがよく、アメリカンチェリー、フルッティ・ディ・ボスコ、バニラやタバコのフレーバーがして◎。
ネロ・ダーボラをベースに、カベルネ・ソーヴィニョンを加えています。
パッシート『Ben Rye'ベン・リエ』は、ブドウの木は昔ながらのアルベレッロ仕立てで植えられています。潮風に吹かれても倒れないように、低く、木のようにこんもりと。おかげで収穫の作業は、腰が悲鳴を上げ、造り手泣かせともいえます。それを天日で乾燥させ、一つずつ手で房から実を取っていきます。これも根気のいる作業。よほどの愛情がなければ、なせない仕事ばかりです。
キラキラと輝く黄金色。よって酸味もほのかにあるのが伺えます。
アプリコットやモモの香り、余韻は干しイチジク。ハニーのような甘さのなかにも、きりっとした線があり、とても美味。潮風に吹かれているのでしょう。豊かなミネラル感を感じます。
秋の夜更けに、じっくりと親しい人と語り合いながら、飲むのに最適なワイン。
(友人は、日本で入手困難な、Ben Rye' のGrappaを買っていました)
現在もなお、シチリアワインを牽引し続けるドンナ・フガータ。
人の集まるあらゆるシーンで飲みたい、シチリアの晴れた空を思わせるワインです。